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先日、作家を招いてのトークショーを見に行った。
小説も面白い方だけど、お話が上手なこと上手なこと。
すごいなぁと感心するほどだった。

作家は長嶋有さんで、話題にのぼった最新刊は「愛のようだ」。
ほとんどのシーンがドライブの車中で構成され、
カーステから流れるアニメソングや歌謡曲もスパイスになっている。

本の帯には「大切なものを失う悲しみを、まっすぐに描いた感動作」とある。
少し前に絲山秋子さんの「離陸」を読んだけれど、
この帯には「人生を襲う不意打ちの死と向き合った傑作長編」と書かれている。

私はこういう「大切なものを失う」「不意打ちの死」という言葉を読み、
物語で亡くなる人が出るのだろうと予測がつくと一瞬、尻込みをする。
まだ、友人の死を身近に感じるので、心が揺れるだろうなと思うからだ。

興味を引かれるけど、「愛のようだ」を手に取るのは、文庫化したあたりかなと
思いつつトークを聞いていたら、キリンジの曲が
物語の背景になっている部分があるという話が出て、わー!と心の中で叫んだ。
キリンジは、亡くなった友人が教えてくれた歌手なのだ。

買うしかない、読むしかないなと決める。
トークショーが終わってから、予告されていなかったサイン会も開かれた。
せっかくなので、私も本を購入して列に並んだ。

長嶋さんの著作が何冊も棚に並んでいたけれど、
「キリンジの曲が出てくると伺ったので、この本を選びました」
と言う私に、長嶋さんは「キリンジ良いですよね」と乗って下さった。

質問コーナーでも話題になったエッセイ、
「安全な妄想の文庫解説は高樹ですよ」と教えてくださった。
「わわわたし、お兄ちゃんが大好きで...買って帰ります」と、
小説の話をせずに、いかに己がキリンジ好きかで押してしまい、帰りの電車で落ち込んだ。

「愛のようだ」では、キリンジの「イカロスの末裔」が出てきた。
キリンジはメジャーとは言いかねる歌手だけど、登場人物たちは、声を揃えて歌詞を叫んだ。
キリンジをよく知る、珍しい人たちの集まりなのだ。

Tちゃんは、きっと長嶋有を気に入っただろうと、何となく思う。
面白いから読んでみて、キリンジが出てくるんだよと、貸したかった。
そして後で、感想をおしゃべりしたかった。さみしいなぁ惜しいなぁと思う。

忙しかったり他に気にかかることがあったり、
Tちゃんを思い出さない時期もあるけれど、
時おり、思い出す時間を作りたくなる。

それは、「会いたい」に近い感覚なのかも知れない。
山口智子さんの雑誌での発言が、そこここで話題に上がっているようだ。
私は本文自体を読んでいないが、抜粋された文章に対して好意的な感情を抱いた。

ネット上には彼女への非難もあると今日、目にした新聞のコラムに書かれていた。
「自分に直接、関係ない相手なのにとやかく言う人がいるんだな」と思って、
あ違うと気がついた。

自分と直接かかわりのない相手だから、とやかく言うのだ。言えるのだ。