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喉が痛むので風邪の引き始めかと、うがいをしたり飴をなめたりしていたが、
何のことはない、昨日、歌を歌い過ぎたのだった。

ことの起こりは、息子が見ていた折り紙の本に「銀河鉄道」の作り方が載っていて、
「銀河鉄道って何?」と質問され、あれこれと説明するついでに「999」の話をし、
佐々木功さんのテーマソングを口ずさんだ。

すると子どもたちの気に入ったらしく、せがまれて何度も歌わされた。
翌朝もまた歌ってとねだられ繰り返していると、夫が「CD持っている」と言う。
ゆえに今、我が家の居間には懐かしのヒーローたちが大集結している。

キン肉マン、マジンガ-Z、ドラゴンボール・・・
男の子のアニメは、どこまでも雄々しく遥かな世界が広がっている。

最近の子ども向けアニメで残念なことの一つは、
主題歌が専用に作られていないことだ。売れている歌手とのタイアップばかりで、
昔の物に比べると気合と迫力が足りない気がする。

勇ましい楽器の響きと歌詞を聞きながら、夕飯の支度に取りかかる。
メニューは子どもたちのリクエストでチキンラーメンなのだが、
もっとこう、火をゴーッとやるような、豪快な調理がしたくなる。


高校の授業で使っていた地図帳を、本棚から出してくる。

奥付には平成2年3月の日付で文部省改訂検定済とある。
四半世紀前のいわば古い地図だから、現在では異なるところもあり、
新しい国が生まれたり街が消えたり、様々な線も変更されているだろう。

地図を取り出したのは、先日、移動したルートを確認したかったからだ。
新横浜から新幹線で名古屋へ出て、接続の良い在来線に乗り換えた。
たぶん鳥羽行きだった。

名古屋を出てどれくらい過ぎた頃からか、ずーっと平野が続き、
通り過ぎた駅名か何かが目に入り、「庄内」と読めた。
私は、ああこれが庄内平野かと思ったけれど、
地図を見ると、どうも伊勢平野だったらしい。

私は広々とした大地を眺めながら、いくつかの停車駅をやり過ごし、
車中で決めた行き先の伊勢で降りた。

伊勢神宮を参拝して、帰りは近鉄の宇治山田駅から奈良方面へ向かう特急に乗った。
途中で赤目四十八滝へはこちらからとの案内や、
伊賀忍者の里と書かれた看板を目にして、へえーと思いながら、たしか大和高田で降りた。

奈良で久しぶりに伎芸天を拝観しようと思ったけれど、
秋篠寺の場所を覚えていず、駅付近に適当な宿泊先もなかったので、
とりあえず京都まで行こうと再び列車に乗る。

奈良京都間は大学生のときに何度も旅行した、なじみある路線だ。
ちょうど夕焼けが始まる時間で、橙色に染まる空に送られながら移動した。
京都駅に降り、財布と体力と心と相談し、とりあえず横浜に新幹線で戻ることに決めた。

地図をなぞると、ずいぶん長距離を移動している。
ほとんど列車に乗っていただけだけど、
すごく満たされていた。楽しかった。

私は知らない土地で乗り物に乗って、ぼんやりと車窓を眺め、
どうでもよいことを考える時間がすごく好きなんだと思った。
正確には、好きだと再確認した。

学生時代に一人旅をしたときのことも、
どこへ行き何を見て食べたと同じくらい、
移動中に見た景色や、そのときの感じを覚えている。

心の中を覗いてみると、そうして少しずつ蓄積されたものが、
宝物のように輝いている。