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夜中の洗濯物たたみとネットサーフィンを終えて寝室に行く。
暗闇に目をこらし、
夫と息子、娘が大の字で寝ている隙間を探す。

今日も無事に暮らせたしあわせをかみしめつつ、
体温で ぬくまった布団に潜り込む。

せ、狭い…。
友人のTちゃんが遊びに来てくれて、
駅から家まで一緒に歩いているとき、
彼女が「とても古い車を置いてあるね」と言った。

Tちゃんの視線を追うと、吊り下げ式のガレージに
覆いを被せた車が数台 保管されていた。

ガレージの周囲は庭木がうっそうと茂っているし、
2階くらいの高い位置にあって見えづらく、
私が毎日のように通る道なのに気がつかなかった。

それ以来、脇を通るたびに目が行くようになり、
破れたカバーから のぞく赤い車の、
ちんまりと丸い形や珍しいエンブレムを眺めている。


友人は、数年前に脳腫瘍を患って手術を受け、
病と付き合いながら生活や仕事をしている。

後遺症の中には記憶障害もあったと聞き、
「学生時代の記憶が抜けたら、そこにいた私たちはどこへ行くのだろう」
そう漠然と考えたことがあった。


ところで今朝みたテレビ番組で、東京の深川近辺にある
日本最古の鉄製の橋が出てきた。
見たことがあるなと思ったら、ずっと前にTちゃんと近くに行ったのだ。

深川をブラブラ歩いていたら、急に彼女のテンションが上がって、
「やっぱり このあたりにありそうな気がしていたんだ~」と橋に駆け寄り、
熱心に説明をしてくれた。

私にとっては赤い車も、日本最古の鉄製橋も、
「ふ~ん」という程度の感想しかないけれど、
理系で建造物マニアのTちゃんには血が騒ぐポイントなのだ。


病を得て、Tちゃんが失ったものもあるだろう。
変わった所もあるだろう。
でも、やっぱりTちゃんはTちゃんなのだ。

そういえば、あの橋も赤色だった。
いつの日かまた、違う赤色を教えて欲しい。
これからも よろしく。